11月26日の誕生花
『しゃこばさぼてん』
ちょっとへんてこな名前だけど
花言葉はスゲーいい言葉なんだよ。
みんな知ってる?
花言葉は………。
やっぱりまだ教えてやんない。
君が俺の誕生日祝ってくれるなら
教えてやってもいいけどね♪
HAPPY BIRTHDAY_Satoshi
「「かんぱーい!」」
街を駆け抜ける風は冷たさを増し
朱色に染まる紅葉にも見飽きてきた頃。
都会に一人佇むアパートで
「大野智バースデーパーティー」という名の
ただの飲み会が行われていた。
パーティーに来てるのは
相葉ちゃんと、翔くん。
ニノと松潤は仕事やら用事で遅くなるらしい。
メンバー全員(しかも男)でパーティーなんて
はたから見れば変なんだろうけど
まぁ……主催は相葉ちゃんだからね。
やりそうなことでしょ?
◇
「そしたらね、志村さんが…」
「まじでか!?あっはっはっは!!」
酒の効果でテンションが上がりきった二人は
ずっとその調子で爆笑していた。
しかしそれとは反対に
俺はさっきから時計ばかりを見て
ため息をもらしていた。
「どうしちゃったのリーダー!飲まないの?
あ!もしかして眠いとか?」
「あ……いや………。」
すると翔くんが
チッチッチ。と指を動かしながら
ずばり大正解なことを言った。
「ちげーよ相葉ちゃん!
大野くんはちゃんがなかなか来ないから
テンションが下がっちゃってるんだよね?」
「そーなの?リーダー!」
「えっ?あ…うん…。」
ずばりそうなのだ。
今日、はウチに来てくれる
(本当は二人で祝う予定だったんだけど)予定だったのに…。
時間になっても来ない。
現在の時刻は10時。
約束の時間は、7時。
来てくれない不安よりも
もし今も外を出歩いていたら…という思いから
心配になってきてしまった。
「大丈夫だよ!そのうち来るって!」
お酒のにおいを漂わせる相葉ちゃんの慰めの言葉から
更に1時間が経過した。
「…ちょっと俺、外見てくる!」
「「え!?」」
とうとう俺はがまんしきれずに
外に出てしまった。
公園、コンビニ、駅。
どこにもはいなくて
そのうち雨が降りだしてしまった。
「〜…。どこだよ…。」
あ!携帯!(って俺気付くの遅すぎ?)
俺はすかさずポケットに手を突っ込んだ。
「あれ?…………無いし…。」
そんな…………。
完全にしくった。
俺はそう小さく呟いて
その場に座り込んだ。
自分の無力さに嫌気がさして
なんの抵抗もなく雨に打たれるしかなかった。
すると、雨が急に止んだ。
「??」
いや、俺の上だけ止んだと言った方が正しいのかもしれない。
上を見上げると
傘を持ったがいた。
「智!?びしょ濡れじゃん!
こんな所で何やってんの?」
あ…………。
俺はに会えた嬉しさと、安心が一気に込み上げてきて
濡れた服のまま、を抱きしめた。
「…智?」
「…何してたの?」
「え?………」
「心配したよ…。
約束した時間になっても…全然来ないし…。
外は暗くなってくし…寒いし…。」
「ご…ゴメンなさい……。」
俺は自分が何を言っているかもあまり把握せずに
を強く抱きしめた。
せっかくの誕生日だってのに、に何かあったら
俺はどうすればいいんだよ…?
本当によかった…無事で…。
それから、ちょっと落ち着いてきた頃。
が片方の手を後ろに回して
一生懸命何かを隠しているのに気付いた。
俺は抱きしめた姿勢で
自分の顎をの肩に乗せたまま
「何隠してるの?」
と聞いてみた。
すると
「な…何でもないよ?」
と言って白状しようとしないので
俺は抱きしめていた手を伸ばして
その物をひょいっと取った。
「あっ…!」
は焦った表情をした。
俺の手の上には
サボテンが一つ。
「これ……何??」
「さ…サボテン…?」
「あ…やっぱり?」
サボテンは解るんだけど……。
「なんでサボテンなの?」
俺は笑いを零しながら尋ねると。
は、少し恥ずかしそうにして
俺の疑問に答えた。
「じゅ…11月26日の…誕生花だから…」
「え…?」
「それでね!知ってる?花言葉。
すっごくいい言葉なんだよ!」
「花言葉?」
「うん。」
「……どんな言葉なの?」
「……き…聞きたい?
ちょっと…恥ずかしいんだけど。」
「え………?」
「何?…もしかして、
そこまで言っといて教えない気なの?」
下を向いて口ごもるの顔を覗いて
目をじっと見つめた。
ちょっとこれ、「花沢類」の真似だったりして♪
「教えてよ…。」
「わっ、分かったから!
あんまり見つめないでよ!」
照れてる。可愛いなぁ。
調子に乗るともいい加減拗ねかねないので
俺はから顔を離した。
「ちゃ…ちゃんと言わせて?」
そう言っては
俺が持っていたサボテンを手に取った。
「このサボテンの名前はね、
『しゃこばさぼてん』っていうの。
花言葉が……。」
は頬を紅く染めながらも
俺の目を真っ直ぐと見つめた。
「花言葉がね、『愛される喜び』…なんだって。」
愛される…喜び…。
「それでね、それで…
私は智の彼女として、私は智に愛されて、
私は幸せだなぁってふと思って、
…誕生日に…この花をプレゼントしたかったの…。」
「………。」
「この花…何処にも売ってなくて…。
探すのに時間がかかっちゃった。」
そっか…。
それでこんな時間まで…。
「まだ時間…間に合うよね?」
がそう言い終わる前に
俺はをまた抱きしめた。
俺の為にこの寒い中、
一生懸命探してくれたのかと思うと
胸が締め付けられるくらい嬉しくなって
が…とてつもなく愛しくなった…。
「さ…智…?」
嬉しすぎだろ。こんなのって…。
「、ありがとう…スゲー嬉しいよ!」
「ほ…本当に?…エヘヘ…。」
「俺もと一緒の気持ちだよ。
が大好きだし
俺もに、こんなに愛されちゃって…
すごい幸せもんだと思う。」
俺は抱きしめていた体を離して
にキスをした。
雨の中、二人の体は冷えきって
凍えそうなくらいだったのに
一瞬のうちに体は熱くなって
二人の顔が赤く染まった。
その時の時間は、ちょうど、12時だった。
「良かったぁ〜!今日、あ!もう昨日か。
当日に智におめでとうが言えて。」
「本当だよ。もう間に合わないかと思った。」
「ふふっ…本当だね♪」
雨は知らぬ間に止んで
空には不格好な月が浮かんでいた。
その月明かりに照らされながら
俺たち二人は寄り添って歩いた。
途中立ち寄ったコンビニで
がバースデーケーキを買ってくれた。
やっぱり誕生日にはケーキがなきゃヤなんだって。
そういうところ、本当に可愛いと思う。
コンビニを出ると
突き刺さるように冷たい風が俺たち二人を囲んだ。
その寒さに耐え切れなかったのか
お互いが離れたくなかったのか
どっちかは分からないけど
二人は当たり前のように手を取り合って
お互いの手を温めながら、再び歩き始めた。
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アパートに着くと
靴が2足増えてた。
だけど、家の中はすごく静かだった。
「皆……寝てるみたいだね。」
がそう言いながらクスクスと笑った。
さっきまでハシャいでいた部屋を見ると
ビールやらつまみやらテーブルの上に散らばったまま
皆こたつの中に入ったまま寝息をたてていた。
「そうみたいだね…。」
返事をしながら俺はというと
今がチャンスだと言わんばかりにに後ろから抱き着いた。
「うわっ!何!?」
ケーキを皿に取り分けようとしていたは
急なことで驚いていた。
「ケーキ…食べないの?」
「ケーキより…がいい。」
「えぇ!?でも。皆いるよ…?」
「寝てるからいいじゃん。
俺…雨に打たれてすっかり体冷えちゃったんだよね。」
「で…でも」
が余計な事を言うのを阻止するかのように
俺はの口をキスで塞いだ。
ケーキよりももっともっと甘いキス。
こんだけ甘いキスしちゃったからには
もう止められない。
誕生日は昨日で終わっちゃったけど
本当のお楽しみはこれから。
願わくば神様…
一つだけあなたから誕生日プレゼントが貰えるならば
どうか来年もとこうやって
甘い時間が過ごせますように。
どうか皆が
目を覚ましませんように!
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