恋がしたい!




そう強く願う聖夜の夜。







君に出会えた俺は

すごい幸せ者だと思うよ。





















HAPPY BIRTHDAY!_23th






























「最近…トキメキが無い…!」









俺がため息混じりでそう呟くと

翔ちゃんが




「は!?乙女みたいな発言すんなよ!」






と言いながら俺を呆れ顔で見た。















ヒドイよ…!翔ちゃん!


















「だってさ、もうずっと恋してないんだもん!

もうすぐ誕生日だってのに〜!」




「誕生日がなんだよ?俺が祝ってやるって!」















……………。















「冗談だよ?」





「あ、…嘘だったの?

ちょっと嬉しかったのに…。」














もういいや…。翔ちゃんでも…(これって失礼?)















そうやって


翔ちゃんに慰められていると


空はあっという間に真っ暗闇になっていた。









なんだか俺の心を映しているようで




その中を歩いて

一人で帰る気にはならなかった。











そう思いながらも


一人寂しく電車で帰る22歳。







もうすぐで…23歳なんだけどね。















電車の中から街を見渡すと

うっとおしいくらい色鮮やかなイルミネーションが目に入った。










今年も…どうせ仕事なんだろうなぁ…。















再び小さくため息をつきながら

空いている席を見つけてぐったりと腰をおろすと、




目の前に、幸せそうな顔をした女の子が座っていた。




膝の上には、ケーキが入っていると思われる箱が一つ。


クリスマスはまだなのに…


甘いものが好きなだけかな?










興味本位で眺めていると

少し電車が揺れた。






すると、女の子が持っていた箱が膝の上から落ちそうになった。
















「「あっ!!」」




















二人で同時に声を出した後、




俺は反射的に

その箱をキャッチした。















「ご…ごめんなさい!!大丈夫ですか!?」








すごいポーズでキャッチした俺に

彼女はすごい表情で尋ねた。









「あ!俺は大丈夫です!

それより箱の中…大丈夫かな?」













俺がそう言うと

彼女は思い出したような表情をして


恐る恐る箱の中を見た。

















「あ…あはは…。」










彼女は苦笑いを俺に見せた。









やっぱりね…。





俺は起き上がると

必然的に彼女の隣りに座って




箱の中を覗きながら





「ケーキ…好きなんですか?」



と質問した。













すると、急に彼女の顔が赤く染まったのが分かった。








「私…というか…彼が好きなんです。」












あ…彼氏いるんだ…。














別になにというわけじゃないけど


多少のショックを受けながら



俺はさらに彼女に問い掛けた。
















「なるほどね!

でもクリスマスは明後日だよ?

ケーキはちょっと早くないですか?」







「今日…急に電話が来たんです。

『手づくりケーキが食べたい』って」








「へぇ〜!

ラブラブなんですね〜」










彼女は幸せそうなキラキラ笑顔で俺に応えた。























ここ!俺のいいところ!











『誰とでも仲良くなれる』












でも、こういうシチュエーションだと…


ちょっと虚しいよね…涙。










「でもこんなぐちゃぐちゃになっちゃって…。

もう渡せませんね…。」






彼女は悲しそうに笑った。







「そうかな?

俺だったら、愛情が込めてあれば

なんでも嬉しいですよ?」






「本当ですか…?」








彼女は少し安心したように

でもやっぱりちょっと不安そうに



俺に質問した。








「本当ですって!

きっと彼…喜ぶと思いますよ!」














それから彼女はお礼のような笑顔を俺に残して


電車を降りた。








俺も降りる駅は一緒だったけど



なんだかしつこい男だと思われるのが嫌だったので




駅を一つずらして降りた。












駅一つ分を歩いてると


沢山のカップルが俺の横を通り過ぎた。











少し居心地の悪さを感じながらも


颯爽と家路に急いでいると









うっとうしい程の人込みの中に



彼女が立っていた。



















一人?


彼氏はどうしたんだろ…。















俺は無意識に彼女に近づいて





「どうしたの?」





と声をかけた。










「あ!さっきの方!

千葉の方だったのですね」





「あ…えぇ…まぁ」






彼女は明らかにあたふたしていた。













「もしかして、迷ったりしてる?」





「あ…分かりますか…?」








彼女は照れ顔で俺を見た。










「いつもはバスで行くんですけど

今日お財布にお金無くって…

だから歩いて行こうと思ったら、道に迷っちゃったんです…。」






















やばい…可愛いぞこの人。











「あ…じゃあ俺がお金貸しますから!

こんな真っ暗なのに出歩くの危ないって!」











そう言って俺は少しだけ渡した。




彼女は、俺が無理矢理バスに乗せるまで断り続けたけど



バスのドアが閉まると

焦ってなにかを書き始めた。







そして窓を空けて




「あの、お金…必ず返したいので

この携帯番号に連絡して下さい!」






そう言いながら


小さいメモ紙を俺に渡した。











バスが発車すると同時に


俺はメモ紙を見た。










そこには彼女のものと思われる携帯の番号と










彼女の名前が記されてあった。




























街がクリスマスカラーに染まって




愛の歌が流れ始めた頃。






俺の心の中には


彼女の…さんの、笑顔と







箱の中に入った


不格好なケーキが現れて



消えることはなく

フワフワと浮かんでいた。


















--------------------------------------
後編へGo!