の住む部屋に着くと
はキッチンから手づくりのケーキを運んで来た。
一方、俺はというと
何だか目のやり場に戸惑ったまま
目を泳がせていた。
態度が表情に現れないように
いつもみたいにテーブルの前にあぐらをかく。
「昨日の夜ね、頑張って作ったんだよ。…甘いの大丈夫?」
「うん。大丈夫だと思う。
てかスゴイじゃん。ケーキ作るとか。」
目の前には
苺が可愛く乗っかったバースデーケーキがあった。
は以前もこうやって料理してくれる事があって
それを旨そうに食べる俺を
いつも幸せそうに眺めていた。
「でしょ? 誕生日だもん!頑張っちゃったよぉ」
顔を少し赤らめながら
エヘっと、
照れ笑いをするが
すごく…急に…ムショウに愛おしくなって
俺は居てもたってもいられなくなり
皿にケーキをつぎわけようとしたを
そのまま抱きしめた。
「……翔…?何…?
ケーキ落ちそうだったよ。」
本気で驚くを尻目に
俺は構わず続けた。
「今日…俺の様子が変な事…気付いてたよな。
ごめんな…こんな日にこんなテンションで……。」
「え…え?あ…いや…気付いてた…けど…。
翔も…お仕事大変なのかなぁって…ちょっと心配しただけ…。」
…。
そのとき感じた感情は、女の子みたいに言うならば
初恋の時に感じる、あのくすぐったい高揚感だった。
心の中を、あの懐かしい感情が支配した。
「お前…可愛すぎだよバカ!」
「!……バカ?…失礼じゃない?」
は笑いながら呟いた。
を疑うのは…もうやめだ…。
を
俺たちの絆を…信じてみようと思えた。
単純かもだけど…
こういうのって結構、単純でいいのかもしれない。
「…あのな?…聞きたい事があるんだ。」
「聞きたい事…?」
俺は体をゆっくり離して、の目を見た。
「な…何…?」
落ち着け…落ち着け…自分…。
「…先週の…先週の日曜さ、渋谷いた…?」
「え…?なんでそれ知って…
あ、二宮くんに聞いたの?」
「聞いたっつーか…見た。」
「見た?…私たちを?」
「うん…偶然…。」
「そっ…かぁ…。」
は少しだけ目をそらして
何か思いついたような顔をした。
「あ!翔。もしかして」
「なんで二人でいたの?」
の話を遮るように
俺は疑問を投げかけた。
さっきのバカみたいな考えは
もう捨てたはずなのに。
やっぱりまだ少し、怖いのかもしれない…。
「なんでって……翔の誕生日プレゼント買うの、
付き合ってもらっただけだよ。」
「………へ…?」
その時の俺は
今思い出すと、すげぇマヌケ面だったのかもしれない…。
まさに”目が点”て感じ?
だって…少しでも浮気だと思っていた事が
自分への誕生日を買いに行ってたなんて。
男として恥ずかし過ぎだろ…。
「俺の…誕生日プレゼント買いに…?」
「そうだよ?あ、やっぱり翔!
疑ったでしょ!私と二宮くんの事。
だから今日元気無かったんだ。」
「え…!いや、だってニノが…。」
「二宮くんが…何?」
「ニノに、二人でいた理由聞いたら
『なんでって…なんでだろね』
なんて言うんだぜ?ちょっとは…ねぇ…。」
「それは、私が黙っててってお願いしてたからだよ!
誕生日はサプライズが基本でしょ? バレたらつまんないじゃん!」
「そっ……そうですね。」
さっきの空気とは一変。
何故だか俺は責め立てられていた。
完全にやられた…。
ゲーマーで、ドS二宮に…。
「いや…とにかく、ゴメン!
なんでもするから、ね?許してよ」
「本当に?じゃあ・・・・・今度連れてって!」
「はい…行きます。行きます…。」
「私がそんな事するわけないのに…。翔はおバカさんだなぁ」
「ホントにすんません…。」
あれ………。
「………。」
俺は、謝って謝って謝りまくってると
新たな疑問が現れた。
「なんで俺だけこんだけ謝ってるわけ…?」
「なんで?私は悪くないもん」
「なんでさ、も一つだけ悪い事したよ?」
「何もしてないよー」
「したよ!電話でウソついたじゃん!『いま一人』って」
俺がそう言うと
は少しだけ焦り始めた。
もちろんその瞬間を、俺は見逃さなかった。
「え…だって…あれは」
「ブー!ダメだよ。言い訳無用。」
「え…。ご…ごめんなさい。」
がそう言いながら
頭を小さく下げた瞬間
俺に嵐のドSの神が降って来た。
「でもあれは…」
「じゃあも、俺の言うこと聞くよね。」
「え…?…なんか………イヤです。」
「イヤじゃない!ほら、俺今日誕生日だし?
仲良くしようじゃないですか。」
は何か察知したのか
ケーキが置いてあるテーブルに体を向き直した。
「とりあえず、ケーキ食べない?
…せっかく作ったんだもん。食べよ?」
完全に構えて隣に座っているを見て
笑いが吹き出してくるのを抑えながら
横から軽く首にキスをした。
「…ケーキの後は?」
「………DVD鑑賞?」
「……なんだそれ…。」
甘酸っぱい苺のケーキを食べた後は
DVD鑑賞でも
のプランを考えるでもなく。
俺はプレゼントを貰うのも忘れて
にお礼のキスをした。
甘い時間を過ごすには
最適のケーキだと思った。
「翔…お誕生日おめでとう。」
「ありがとう…。」
今年の誕生日は
空回りしまくりで
にも迷惑かけたけど
一つだけ覚えておいて欲しいのは
それは、が好き過ぎて
どうしようもないから
気になって気になって…
いてもたってもいられなかったんだ。
それだけに嘘偽りはないから
俺のこと、信じていて欲しい。
「大丈夫だよ…。私はずっと翔のこと大好きだから。」
この言葉が、俺の最大のプレゼントだった。
これからも愛が絶えないように
俺のこと好きでいてね。
ホント、ありがとう…。…。
あ、それから。
拝啓
二宮和也サン。
来年の誕生日は平穏に迎えられるように
配慮願います・・・・。
ハリウッドまで、愛をこめて。
櫻井翔。
Web拍手かBBSにて一言だけでも感想お待ちしております^^
リクエストをくださったかこさん!
遅くなってすみませんでしたm(__)m