「ちょっとごめんね。」







そう言って


鳴りやまない携帯を握りしめて

部屋を後にする君。








そんな時、

俺の中に現れるこのモヤモヤ感は

一体なんなんだろう……。























信じられないほどの嫉妬心


























「電話、誰だったの?」



「ん?会社の人。明日会議があってね、その話だった。」









「ふーん…」



















そう言いながらは 、携帯をバッグにしまって、俺の隣に戻って来た。














「男の人?」





「え…?うん、そうだよ。」















さりげなくそんな事を聞いて

コーヒーを一口飲んだ。
















………俺、どうした?

















「会社でもよく話とかするの?」





「え…?…そりゃね。 お仕事しなくちゃ。」














俺が質問を繰り返す度に

は目を丸くして驚いていた。









「そっか…。そうだね。」













俺は無意識のうちに視線をそらして

テレビに目を向けた。






















「面白いね。この番組。」


「う…うん…そだね。」








は相変わらず目を丸くしたまま

俺の様子を伺っていた。









それは、少しも面白くない番組を

それまた面白くなさそうに褒めている俺を

不思議に思って、とかいう訳じゃない。







多分……そう。

俺がこんな風に質問するなんて

普段は考えられないから。



珍しがってるんだと思う。










「何だよ。さっきからじろじろ見ちゃってさ。」





「え?ううん…。」















はそう言うと、少しだけ考える顔をして

その後、答えが分かったのか

少し嬉しそうな表情をしたかと思ったら

ニヤっと勝ち誇った表情をした。










「今度はニヤニヤしちゃって…何だよ?」




の言いたい事は分かってる。



ただ気付かない振りをしてるだけ。





















質問してて気づいたんだ。

















俺がヤキモチ妬いてるって事。













「智…もしかして妬いてる?」




がそう言った瞬間

俺はわざとらしく、飲みかけのコーヒーを吹き出した。




「妬いてる?誰が?誰に?」







「智も妬くことってあるんだねー。」


「俺が?妬いてないよ。」




は何もかも分かったような顔をして

俺の顔を覗き込んだ。










俺は無性にばつが悪くなって、赤くなった顔を

がいる逆の方にそらした。









「大丈夫だよーその人結婚してるし」



「結婚してなかったら、好きなってた?」



「はぁ?なるわけないじゃん。」


「だって今の言い方はそうじゃん」





「智くん、結構なヤキモチ焼きだね。新しい発見だよ〜」






はそんな事を言いながら、俺の頬を細くて白い指で突いた。















目の前のテレビからは

お世辞でも面白いとは言えない光景が広がっていて。



テーブルの上にあるの分のコーヒーは

すっかり冷めて味も何も無くなっていた。








それなのに隣に座っているは、俺の煎れた絶品コーヒーの存在を忘れて

相変わらず顔を緩めながら


コーヒーを飲む素振りをしながら

カップで顔を隠す俺をじろじろ見ていた。



してやったりの表情が、俺の視界に入ってきて

それと同時に、俺のコーヒーは空になってしまった。















「智も、ちゃんと私のこと好きなんだなーって

再確認できちゃったね。

妬かせてくれた同僚に、感謝しとこ。」




そう言いながらはハナ歌混じりで、

空になった俺のコーヒーカップと、

冷め切ってしまった自分のカップを手にキッチンへと向かった。















「なんか…ムカツク」











負けっぱなしで悔しくなった俺は

のあとを追いかけて、流し台に立っているの腕を掴んだ。

















「何・・・?智・・・。」
















仕返しと言わんばかりに、さっきから緩みっぱなしのの唇に、キスをした…………。



































仕事だからしょうがない。



どっちかというと

俺の仕事の方がそういう面では心配かけてるのに。

にこんな事言える立場じゃないのに。






それでも、どうしても気になってしまう。






他の誰と喋ってるのか

会社ではどんな風なのか



時々、全部を聞きたくなる。



一日中ずっと・・抱きしめていたくなるんだ。















桜もすっかり散り始め

地面には、桃色の絨毯をしき始める


4月中旬のこと。





俺達が付き合い始めてヵ月。

最近になって分かった事がある。










こんな仕事の俺でもヤキモチも妬かず

は意外にも俺より冷静で。

でも、逆に言えば、ちゃんと俺のことを信用してくれているって事。




年だってそんなに変わらないのに、

実はの方が大人だったって事。









そして、俺は自分が思ってる以上に

が大好きで、どうしようもないという事。




大好きで大好きで、離したくない。




ずっと傍にいたい。





誰にも触れさせたくない。





ずっとを独占していたい。













こんな事を俺が思うなんて、誰が想像できただろうか・・・・・・・・・・・・・。



















それは、自分でも信じられない。





自分でもうっとうしいくらいの


に接する全てのものへの、嫉妬心だった。

































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以前みさとさんに要望を頂いたので、頑張ってみたのですが・・・(汗;
期待に添える事ができなくてすいませんっ!!(逃げっ!