空はいつもと変わらずつまらない程の晴天。


世間もごく平凡に社会を成り立たせていて







電線から見下してくる烏たちも

いつも通り訳の分からない鳴き声を発して俺の思考を狂わせる。












いや…今の俺の思考を狂わせる理由は







鳥でもない

つまらない世間でもない


青々とした空でもない。































『好きだけど……ごめんね……和也…。』










あの言葉だ。









それから

が部屋に帰る時に小さな声で呟いた

あの言葉も……。























『私の事は…早く忘れてね』












なんで?





なんでそんな事…簡単に口に出来るんだよ。









浮気がバレて

もう俺に言い訳をする気も失せた?








俺よりも


そいつを選んだってわけ?












あの時、俺よりあそこにいたであろう

ゴツめのスニーカーの持ち主へと去ったを思うと


そう思われてならない。












「…ははっ」




なぜだか自然と顔が緩んだ。











「俺って……バカだよなぁ…。」















他の男に気があるだなんて知らずに


毎日「…好きだよ。」なんて呟いていた俺は



なんて愚かで


なんて憐れなんだろうか。









情けなさと恥ずかしさが入り交じって


俺は笑うしか出来なかった。












そうやって笑って、笑って、笑い疲れた頃には


この現実が消え去って

が目の前で微笑みかけてくれたらいいのに。





抱きしめてくれたら

泣いてしまうほど嬉しいのに。













それでも笑い疲れた俺に残ったものは



絶望感という涙だけ。















空は透き通るように青くて

鳥たちも幸せそうに飛び交ってる。




玩具でも買ってもらったのか

6歳くらいの子供が母親らしき人と手をつないで

溢れんばかりの笑顔で俺の横を通り過ぎる。











二人乗りのカップルや

公園を笑顔で歩く老夫婦。






みんなみんな幸せそうに暮らしているのに。




暗闇に居座ってるのは…俺だけ?









なんだか

そこに存在している自分がやるせなくなってきた。








このまま



自分という存在が

消えてなくなってくれたら嬉しい。






そう思ってるのに…やっぱり一人は嫌だとか思ってる自分は



やっぱりバカだよなぁとつくづく思う……………。



























そうやって、


足元の石ころを蹴って気持ちを持て余していると





何やら言い争いのような声が聞こえてきた。























「私のこと…嫌いになったの?

言ってくんなきゃ分かんないじゃん!」




『そういうのが嫌なんだよ。

つーか俺に他に女が出来てんの知ってるっしょ?

もうはいらなくなったんだよ。』
















痴話ゲンカか?



男の方もヒドイやつ。

















「もう………私を必要としてくれないの?」








『…さぁね、とりあえず今はいらないかな。

…じゃあ…バイバイ。』

















相手の男がそう言うと

立っていた女の子は泣いてしまった。




そして、女の子が泣いて動けなくなってしまったのをいいことに

男は去っていってしまった。
















女の子は

泣き崩れて、座り込んでしまって

動けなくなっていた。








普段他人なんてあまり気にかけない俺なのに


何故かその女の子からは目が離せなくて


ずっと見守ってしまっていた。








何故だろうか……………。



通り過ぎる事が出来ない。


















そして俺はいつの間にかその場を離れて




気付いたら彼女の近くに立っていた。












彼女の周りを歩く人は


彼女を冷ややかな視線で見つめる人もいたり



クスクスと笑いながら歩く女子高生がいたりと




実に冷たい雰囲気だった。









その時俺は



彼女に、あの時の自分を重ね合わせていた。




















(この人も…俺と同じ…?)











いや…俺よりも不幸なのかもしれない。


恋人に捨てられた事実は一緒だけど、


この人は



必要性まで失われてしまった。















可哀相な人だ。




















でも……………。











同じ境遇にあるこの人なら




俺のことを


理解してくれて


慰めてくれて



「辛いよね…」って……


優しく抱きしめてくれるかもしれない。





































「大丈夫……ですか?」










そして、俺はついに話し掛けた。







彼女は俺に気付くと


止まりかけた涙を再び流し始めて


止まることはなかった。








俺はそれを見た瞬間












さっきまでの、




受け身で


卑怯で


醜かった気持ちが消え去って





逆に、俺がこの人の苦しみを理解して


慰めてあげて、


いつでも涙を拭う役目を果たしたいと思った。
















そして俺はごく自然に


その人を抱きしめていたのだった。


























































それからは、坂を転げ落ちるように


に惹かれる一方だった。
















今まで、「二宮さん」と呼んでいたのに

ある日を境に「和也」と呼ぶ君だったり





俺のギターを聴いて

微笑んでくれる君だったり







そんな


とてつもなく愛しくなる。





















時々すごく淋しそうな顔をする君を



見たくなくて


笑ってほしくて




強く抱きしめてしまう。














笑ってほしい。









俺はの笑顔が大好きなんだから。


















そして今日。







二人で気持ちが通じ合ったと思えた朝。






に、元カレからの電話があったと聞いた俺の中には




言葉には言い表せない程の嫉妬心が芽生えた。



















俺…その時、改めて気付いたよ。


















俺はを可哀相な人としてでなく







もはや一人の女性として



しっかりと…愛してるんだなぁ…ってね。











































-------------------------第7話に続く。-------

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