和也は不思議な人。
私が部屋に会いに行くと
ゲームに夢中でこちらを向こうともしないのに
私があの人を思い出して
涙を流すと
誰よりも早く駆けつけて
私の涙を拭ってくれる。
笑いかけてくれる。
そんな優しさが
嬉しい。
「俺のこと和也って呼ぶことにしたんだ」
「え?…うん。」
ここはまた和也の部屋で
和也は
ギターを片手に呟いた。
「ダメだったら…言ってね?」
「あ、いや…ダメじゃないけど」
そう言うと和也は
顔を下に向けてギターを弾き始めた。
あれ?
もしかして……。
照れてる…?
「…可愛い」
私は笑った。
それを聞いた和也は
少し顔を赤くしているようだった。
「何でそこで可愛いが出てくるんだよ」
「え?…何となく」
「何となくって…」
そんな和也を見て
私からはまた笑みが溢れて来た。
あれ?
私…。
「・・・」
「ん?」
ふと気付くと
和也はギターを床に置いて
こちらを見ていた。
「…何?」
「キスしていい?」
え?
「…何で?」
「…何となく。」
「何となくって…」
「何となく返し」
「あ…」
「ダメ?」
真っ直ぐな瞳で見つめてくる和也に
「…いいよ。」
私は断れなかった。
そんな瞳で見つめないでほしい。
心の隅々まで見つめられているようで
逆らえなくて
少し怖くなってしまう。
和也はゆっくりと
私にキスをした。
なぜか少し嬉しくて、けど
その後にどうしようもない不安が押し寄せてきた。
ダメ
ダメだ。
嬉しいなんて
和也を好きって言ってるようなもんだよ。
そんなのダメだ。
「止めて?」
私は無意識に和也を突き放した。
「…何で?」
今度は悲しそうな瞳。
そんな目で見ないで。
好きでもないのに
「…好きでもないのに
こんな事しないで」
「好きだよ?」
「え?」
「俺は…初めて会った時から好きでしたよ?
さん。」
和也を見ると
嘘をついているような
表情じゃなかった。
「私は…」
私は違う。
「私は…好きなんかじゃない。」
その言葉を口にしただけで
胸が張り裂けそうだった。
でもダメだよ。
ここでまた人を好きになったら
離れていってしまうよ?
また
あんな悲しみを味わう事になるよ…?
好きなんかじゃない。
私は和也を好きじゃない。
でも何で?
何でこんなに悲しいの?
和也を好きじゃないって思う自分に対して
何でこんなに悲しくなるの?
もう涙は渇き果てて
もう流れないと思っていたのに
何でまた溢れてきてるの?
『それはね…』
その時
あの人が心の中に現れた。
『それは・・・が弱い人間だからだよ。』
「そっか・・・・・・・。」
背を向けたかずなりは
再びギターを手にした。
違う。
私は和也が好きじゃないんじゃない。
好きになるのが怖いだけ。
ねぇ和也、
好きなんて言わないから
私から離れていかないで?
もう私を一人にしないで
言葉に表すことの出来ない感情が押し寄せてきて
気づいたら私は
和也に抱きついていた。
人を好きになるのが コワイ。
一人になるのが コワイ。
私はそんな、弱い人間なんだ。
-------------------------第3話に続く----
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