最終話 キラキラした日々。
全てを話し終えた後、
俺はの顔が直視出来なかった。
怖かった。
の反応が…。
この話を、はどう受け取るんだろう。
どう俺に返すのだろう。
気になったけど……
覚悟は出来ていた………。
そんな、少しだけ無理をして強がっていたとき。
「和也…」
が俺の名前を呼んだ。
その瞬間、
俺の体が
温かいものに包まれた。
「和也も……苦しかったの…?」
「え…?」
俺の頬に
ポタリと一つの雫が落ちてきた。
俺の涙じゃない。
の……キレイな涙だ。
「私ばっかり…甘えちゃってごめんね…。
和也も…泣きたかったよね……ごめん…。」
そう言いながら
は俺を強く抱きしめてくれた。
そんな
そんな反応が来るとは思わなかった。
引かれるって……嫌われるって思ってた。
なのに…
が俺のために…
俺のために泣いてくれてる。
泣いてもいいんだよって…
言ってくれている。
それがはっきりと伝わってきた瞬間
俺からも涙が溢れてきた。
溢れて
溢れて
止まらなかった。
もしかして…が言うように
俺…ガマンしてたのかな…?
こうやって優しく抱きしめられながら
思いっきり、泣きたかったのかな……?
水風船が
パチンと音を立てるように
俺の中で何かが弾けて
の腕の中で俺は
子供のように泣きまくっていた。
涙を流しながら
俺は思って。
願った。
この涙が渇ききった頃
きっと俺の心は晴れて
吹雪のように吹き荒れていた雪も
きっと溶けて無くなることだろう。
冷たい冷たい雪が溶けると
俺たちには温かい
春が…やってくる。
だから…
それまでもう少し
もう少しだけでいいから…
涙で包まれてる俺を
君の腕で優しく隠していてほしい。
また君を抱きしめることが出来るくらい
強くなって、戻ってくるから。
◇
そしてまた一つ、夜が明けた。
俺が目を覚ました時
また隣りにがいなかった。
「…?」
ダメだよ…。
まだ隣にいてくれなきゃ…。
「和也…起きた?」
は
ゆっくりと…俺の視界に入ってきた。
「おはよう・・・。いい天気だよ!」
まだ完全に目が覚めてない俺の視界には
朝の光で輝くの笑顔が見えた。
手を伸ばして
俺はを自分の腕の中に入れた。
「かず……もう大丈夫…?」
暖かい…。
これがなきゃ…起きたくないよ。
「うん…大丈夫だよ…。
が笑ってくれるから。」
「ふふっ・・・。大丈夫なら良かった♪」
の暖かさと
窓から注ぐ光があまりに心地よくて
もう一度眠りに入ろうとした時
が
キスをして俺を起こした。
「なに?びっくりしたぁ…。」
「会いに行こうと思ってるの。」
「誰に?」
「前の……彼に」
「え……?」
『何で?』
◇
この間の電話で場所と時間を決めたのであろう。
建物の下に
一人の男が立っていた。
「!」
がそう呼ぶと
男が小さな笑顔で振り向いて
俺の存在に気付いた後
複雑な表情でを見直した。
「…久しぶりだね。」
「そうだね。……ねぇ…………。
何の用で私に電話してきたの?」
が突拍子もなくそう聞いて来たので、
男の顔も明らかに動揺していた。
「で…電話でも言ったろ?
俺…ともう一度…。」
男連れのに
『よりを戻すために。』
なんて言えないのだろう。
男は言葉を詰まらせていた。
「まさか、よりをもどそうなんて言わないよね?」
がわざとらしくそう言った後、
は
後ろにいる俺の手を取って
固く手を繋いだ。
「はもう…私には必要ないんだ。」
「え…」
「はもういらないから。
もうさよならだから。」
「…。」
「だからもう…バイバイ。」
があまりに眩しい笑顔でそう告げるので
男は完全に言葉をなくして
俺たちに背を向けて去って行った。
『何で?』
俺がさっきに質問した時
はこう答えていた。
『いらないって言って捨てられて………。
私だけあんなに泣かされて、苦しめられて
悔しいからさ…。
最後にガツンと…言ってやろうと思って。』
そう言っては
前の男に会って話して
きっぱりと別れを告げて
自分のキモチにも整理をつけたのだ。
初めて俺がに会った時とは
まるで別人のようだった。
「…強くなったね。」
街はすっかり年末の忙しさに追われている頃
俺はと手を繋ぎながら
ゆっくり公園を歩いて、そう呟いた。
「そうかな?…今までが弱かったんだよ。
あの人にすがり過ぎてたんだと思う…。
でも…和也に会えて私…
変われたんだよ。
なんでだろ………不思議だね…。」
俺の横を歩いているの顔を見ると
すっきりした表情で
透き通った青空を仰いでいた。
「俺はに出会えて…救われたよ。
…………ありがとう……。」
「ありがとうとか…ごめんとか……もう疲れたね。」
そう言いながらは
俺に抱き着いた。
「かず…?」
「ん…?」
「私の事…好きですか?」
「……好きだよ…。」
「これからも…ずっと好きでいてくれますか?」
少しだけ不安げに
は俺に尋ねた。
強がりながらも
どこか心細そうに
俺の胸に小さくおさまったを
強く抱きしめた。
「ずっと…これから先もずっと…
俺は…が好きだよ。」
「離さないで…一人にしないでね。」
「うん。分かった」
の顔を上げて
少しだけ涙が滲んだ瞳に、頬に、唇に
優しくキスをした。
冬の太陽が俺たちを照らして
鳥たちも気持ち良いくらいに
大空を羽ばたいている。
俺は……俺たちは
そうしたキラキラした明るい未来が見たくて
キラキラした日々を自分たちで作っていくために、一歩ずつ歩き始めた。
この先、何度君とぶつかって
何度君と分かち合っていくのだろう。
想像してみてよ。
すごい楽しそうだと思わない?
そのたびにきっと、
俺はとの距離を縮められる気がするんだ。
を理解して、もっと好きになれると思う。
何があろうとも
俺は、を離さないから
そばにいるから…。
も…俺を離さないでね。
これからは…が泣かなくていいように
いつまでも笑顔でいられるように
俺なりに、頑張るよ…………。
本格的な冬を知らせるかのように
突き刺さるような風が街を駆け抜けた。
冬は寒い。
寒い寒いと思っていたのに
今日の俺はなんだか温かい気持ちで埋め尽くされていた。
の唇に春の温かさを感じながら
これからの未来を想像しながら
俺は心底…幸せを噛みしめていた。
一応ここで終了!です!
ちゅ…中途半端・・・・・ですか。そうですねm(__;)m
なんでも最終回って怖いですね。どう終わればいいのやら・・(T_T)
最後までお付き合いしてくださった方!ありがとうございました(oT▽T)o
もっといいお話が書けるように、修行してきます・・・。
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