最近、俺がにキスしやすくなった理由。


それは皮肉にも、にとっては悲劇だった。


































  































出無精の俺がせっかくの家に来たっていうのに

さっきからは俺と目を合わせようとせず、雑誌を凝視して

そればかりか何故か深ーく帽子まで被っちゃって…意味解んねぇ。




















もっと顔見せてよ。


































そんな雰囲気でゲームもする気が起きなかった俺は

恐る恐るに問い掛けた。








「ねぇ、…何してんの?」


「え?…雑誌、読んでるの」



いや、その距離じゃ読めないだろ。





「明らかに不審者だよその帽子。部屋の中なのに」


「…今は部屋の中でも焼けるんだって。日焼け防止に…ね」



「いや…ホントに意味解んないよ?」



そう言うのと同時に俺は

と俺を遮る雑誌を上に持ち上げた。








「あ゛っ…」











明らかに焦っている










なんでだ…………?



















「どしたの?」



「いや…なんでもないよ」




そう言いながら

ただでさえ深い帽子を更に深く下げた。








「なんでもない事ないだろーそりゃ」







帽子も取ってやろうと近づく俺に気付くと

は逃れようと器用に足だけで後ろに下がった。


しかしの健闘空しく

後ろのソファーで行き止まりになってしまった。










「ふふっ…残念でした」









勝ち誇った気分の俺は、それでも嫌がる

を尻目に、帽子を剥ぎ取った。
















「……………ん?」
















帽子が取れたと同時に見えた額には

ピンク色のニキビらしきものが、ど真ん中辺りに居座っていた。





「ちょっ…見ないで!…和のばかぁ!」







は見られたのに気付いて

手で額を隠しながら後ろのソファに顔を埋めた。





「え!それを隠そうとしてたわけ?…てか何で俺がバカなんだよ!」



「こんなおっきいニキビ最悪…。見られたくなかったの…」






そう言ったと思ったら、

今度は泣いているようなの声。







「そんな…ニキビくらいで泣くなよなぁ…すぐ治るって」




「和はいつもつるつるなのに……和は多分人間じゃないのよ」





あー…もう宇宙人でも火星人でもなんでもいいよ。




〜。………ちゃーん」





頭を優しく撫でても、名前を呼び掛けても、

の機嫌は中々治らなかった。










「もう解ったから、…顔見せてみ?

今日まだの顔、ちゃんと見てないんだけど」




「見せれないよこんなの」


「いいから見せてみろってば」










それからは渋々体を起こして、俯いたまま体の向きを変えた。










「もっとちゃんと見せて」








そう言うと俺はの頬に手を当てて

少しだけ上を向けた。
























やっと見れた。大好きなの顔。


……ちょっと泣いちゃってるけど。

















「あんまり見ないでよ…」




あまりにも俺がじっと見つめるので、

は耐え切れず、再び手で額を隠して目をそらした。








「こうすれば見えないじゃん」


「え…?」






『何?』とが視線をこちらに向けるのと同時に

俺はの手を額から外して

の額と俺の額をぴったりと合わせるようにした。












「ね?…これならニキビ見えない。」


「…でもっ…顔が近過ぎやしない?」



「キスする時はいつも近いじゃん」


「んな……っ!!」





そう言うと、目の前にいるの顔が

かぁぁっと赤く染まっていってるのが解った。







「…和はなんでこう…意地悪かなぁ…」


「天邪鬼ですからね」







がやっと、小さくても笑顔を零してくれた後、

目の前にいるに、なんの迷いもなくキスをした。








ほら、キスしたら何てことないでしょ?


お互い目を閉じてやるもんだし。



とは言っても、実は毎回俺はこっそり目を開けている事を、

毎回素直に目を閉じているは知らない。




俺にとってキスは、大好きなの顔を

間近で見れる絶好のチャンスだしね。
























































「ほら、あれから3日しか経ってないのに

 ニキビ治ってきてるじゃん。俺のお陰で」


「なんで和也のお陰なの…!」


「俺がキスしてやったから」



「………はぁ?」




「まぁ、細かい事はいいから。…ほら、目ぇ閉じて」


「な…なんで?」




「ニキビ…治したくないの?」




”なんか和……ヤブ医者みたいだよ”なんてぶつぶつ言いながらも



いつも素直に目を閉じていた。












には悪いけど………


この赤いニキビ、当分治らないでいいかも。





一生懸命隠そうとする、すげぇ可愛かったし。





なにより、キスする時の口実になるしね。






















そう思いながら俺は、の睫毛、表情、


ついでに赤く膨らんだ小さなニキビまで。


の全部を、溢れるくらいの愛情で包みながら、



いつまでも忘れないよう、離さないよう、頭に焼き付けていた。














































更新がいつも遅くてすみません!
遅れといてそれなりの作品ですみませんm(__)m

BBSで、ひと言だけでも感想お待ちしております^^

                  2006/8/26