深夜の帰り道。



真っ暗な闇に包まれる俺とは対象的に、少し離れた街からは

うっとうしいくらいのネオンの光と、人々のざわめき。








ただそれだけのシチュエーションなのに

どこか、心が締め付けられるような孤独感。






そんな時ふと空を見上げると

真ん丸とした月だけが俺を見ていた。


月だけが俺を見守ってくれてると

錯覚してしまう程の神々しさだった。










泣いてしまいそうになる自分を抑えて

通話ボタンを押したのは

こんな自分を、優しく抱きしめてほしかったからだ。




































君に会いたい。







































「潤?今ね、潤に電話しようと思ってたんだよ」


「そっか…」








の声は明るくて可愛くて

でもどことなく、暖かさを帯びていた。




俺はこの声が大好き。






淋しさを包み込んで

どこかに飛ばしてくれるんじゃないかとすら考える。









「今…潤なにしてんの?」


「え…?いま帰ってるところ。…なんで?」


「あ、いや…元気ないっぽいから」










ほら、にはすぐにバレるんだよね。




俺は嬉しさと恥ずかしさが入り交じって

足元にある小石を転ばす程度に蹴飛ばした。










「元気…ないかも。がいないから」






俺が珍しく甘えた言葉を言うから

は少し黙った。





どうせまた子ども扱いするんだ。




そう思って、転がった小石にもう一撃しようと思った瞬間。








「今から潤のところ行く。今どこ?」





「……××公園の前。」



「分かった!待っててね」


「ん…分かった。待ってる」





俺は正直この時、本当に涙が出そうだった。


なんではいつも、俺の考えている事が

俺が望んでいる事が分かるんだろう。







風に揺れるブランコに座り込みながら

足が地面にピッタリ着く不自然さに、

勝手に自分は成長したんだなと改めて実感していた。


そして頭の中にはずっと、これから会えるの顔が浮かんでいた。


















「潤…」



それから数分後、はいつもの笑顔で俺の前に現れた。




…ごめん、急に…」

「なんで謝ってんの。私が会いたいって言ったんだし」



それでも俺は、に申し訳なかった。


電話では言わなかったけど、に会いたくて仕方がなくて

そんな気持ちがに伝わってしまった気がして、

に気を使わせてしまったと思ったから……。


























俺はいつまで経っても、ガキなんだ。


























俺の隣に立つを見上げると

は俺の様子に気付いたのか、頭を優しく撫でた。




「……ありがと」






その後が変な事を言ったのは、

に俺の気持ち全てが伝わったような気がして、本当に泣きそうになっていた時だった。







「あ!ダメだよまだそれ言っちゃ!」



「……は?」



急にそう言われて、俺がマヌケな顔をしてるのを尻目に

はしきりに時計を確認していた。






「……なんかあんの?…もしかして忙しかった?」






「ん?…潤、明日がなんの日か忘れた?」


「明日…?……あ、あした」



その瞬間、の顔が近づいてきた。































「23歳のお誕生日、おめでと」



























の唇が離れたのと同時に、ふわっとした笑顔が見えたと思ったら

何故だかその笑顔が急に滲んでしまった。






「潤…泣いてるの?」


「え…?あ、…え?俺泣いてる?」







ふと自分の頬に手をやると、今流れたばかりの温かい涙が指に触れた。



「本当だ…なんでだろ」






不思議に思っているように見せ掛けて、実は分かっていた。


淋しくて淋しくて、心に大きな穴が開いていた気がして

月なんかじゃない。に抱きしめられたかったんだ。









そう思いながら俺は、不意にを抱きしめた。





「潤…なんかあった…?」


「なんもない。…がいてくれて…よかった。」


「へ?………急にどうしたの。」


「そう思っただけ。」



「そ…そっか」






を抱きしめながら俺は、からパワーを貰い過ぎないようにと思いながらも

溢れ出す気持ちを抑え切れずに、を強く抱きしめていた。






人を孤独から救うのは何なのかと、毎日考えては悩んで、周りを一生懸命見回して


めまいで気がおかしくなりそうだった。いつも。

でも答えは、意外にもすぐ傍にあったのかもしれない。















「誕生日、……………思い出させてくれてサンキュ。」


「ふふっ。やっぱり潤、忘れてたね。私はいつも潤の事考えてるもん。忘れる訳ないよ。」












少なくとも俺は、その大事なものを、はっきりと見つける事が出来たのかもしれない。






















満月の光が道を照らして、俺達の行く末を明るく輝かせていた。

未来に見える光景の中の俺は、決して一人ではなかった・・・・・・・・・。



















































END


今更ながら、これが潤くんのBD小説とさせて頂きますm(__)m
ニノさんのBD小説も書けてないのにゴメンなさい(T_T)ニノさんはまた来年・・(コラ)
感想、心よりお待ちしております^^